サンシャイン水族館へインタビューしてきた【後編】


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アクアルバム公式 2017/04/06(木)19:13
不定期にお送りする特集「アクアのプロへインタビュー」
サンシャイン水族館へインタビューしてきた【後編】の今回ご紹介するのは、サンシャイン水族館の表と裏です。
家庭の水槽とは桁違いの規模である水族館の水槽は、いったいどのように維持されているのでしょうか?
また、インタビューの後半戦もありますよ!

それでは早速、サンシャイン水族館へお邪魔させていただきます!


サンシャイン水族館に一歩足を踏み入れるとそこはまるで南国の高級リゾートホテル。展示エリアへ向かう通路は砂浜に向かって歩いているような気分にさせてくれます。

屋外エリアでは頭上にアシカが泳ぎ、その向こうにはビルがそびえ立つという異空間。

こんなビルに囲まれた都会の真中で、アシカのショーまで見ることができます。

そんな他の水族館とは一味違う、ちょっと不思議な体験のできるサンシャイン水族館ですが、展示されている水槽もとても魅力的なものばかりでした。

洞窟水槽


神秘的な雰囲気の洞窟水槽。
この神秘的な空間を作り上げるために様々な工夫がされています。

まずこの水槽、洞窟というだけあって上部にも岩のレイアウトが施されています。
実は真ん中に人ひとり入れる程度の穴が開いているだけで、メンテナンスやお魚の世話等の際の出入り口はそこしか無いのです。

その為問題になるのが照明です。
この穴からの照明だけでは水槽全体を照らすことはできません。
そこでこの水槽には沢山の水中ライトが仕込まれています。
これにより照明を補うだけでなく、上から照らすだけでは表現できない「岩陰」もきれいに出て、より幻想的な雰囲気を作り上げています。

他にも奥行きを出す工夫として、インタビュー前編でも紹介した角を無くすことに加え、水槽の奥に洞窟の出口のような穴を小さく作り、遠近法の錯覚で実際より奥行きがあるように見せているそうです。

チョウチョウオ水槽


一見奥に広大な空間が広がる大水槽に見えますが、チョウチョウオは逃げも隠れもせず、常に最前列で私達を魅了してくれます。
実はこの水槽、手前と奥で仕切られていて、手前はチョウチョウオ水槽として独立しているのです。
よく見るとアクリルの白い境目が

やはり広い水槽で他の大きな魚と一緒にしてしまうと餌を取られてしまったり、せっかくきれいな魚なのに隠れてしまったりするそうです。
ちなみに奥の水槽はサンシャイン水族館最大のラグーン水槽です。

シードラゴン


こちらはウィーディーシードラゴンです。
光の刺激に敏感なため、ガラス面がマジックミラーになっていて中からは外が見えないようになっているそうです。
ブリード個体ですが活餌しか食べず、生きたイサザアミを与えているとの事です。

日本の清流水槽


こちらは日本の川の上流をイメージした流れの速い水槽です。
日本の淡水魚に注目して欲しいという事でレイアウトにはあまり力を入れていないとのことでしたが、それでも展示の工夫は随所に感じられました。
まず、水草の傾きを見ると分かると思いますが、水流が本当に凄い勢いです。
この水流のおかげで動きのある水槽が作れるんですね。
照明もスポットライトを使って、水面の揺らぎも相まって幻想的な雰囲気を作り出しています。

「自然界だと光も水も魚も水草も全部動いているので、そういう所を大切にしたいと思っています」
という水族館の方のお言葉が印象的でした。

家庭の水槽でも、市販のスポットライトにアルミホイルを巻いたり、市販のファンで水面を揺らしたり、そんな事でこういう見せ方もできる、とまたひとつ水族館のテクニックを伝授(?)して頂きました。

いざ、バックヤードへ!


まだまだ素敵な水槽がたくさんあるのですが、それを紹介していたらキリがないので割愛させていただいて、ここからは普段目にする事のないバックヤードをご紹介します。


まず、展示裏はこのように非常に狭く、そして配管がビッシリ張り巡らされており、なんというか……男心のくすぐられるロマンに溢れた空間でした。
身体を横にして通らないと変なボタン押しちゃいそう…

天井も狭く、かがまないと頭をぶつけてしまう箇所も多かったです。

複雑に張り巡らされた配管と、その太さにもびっくり

誰だぶつけたの(笑)


所狭しと設置されている設備も当然ながら巨大です。
せっかくなので、サンシャイン水族館最大のラグーン水槽を維持している設備をご紹介します。
サンシャインラグーン水槽。とても1枚には収まりきらないサイズです。

真上はこんな感じ




照明
巨大な水槽はその分大量の照明が必要になるのは当然ですが、更に水深も深いため規格水槽では考えられないような強力なものが必要になります。
この水槽に使われている照明は高速道路等で使われているLEDの強力なものだそうです。
もはや見ているカタログは熱帯魚用品の物ではなく道路工事用の物になってしまうというお話でした(笑)

濾過器
当然濾過槽も超特大サイズです。
大きすぎて縦に置くスペースがなく横置きになっています。
その巨大さと周囲の狭さから、出来る限り引きで撮っても写真に収まりきりませんでした。

プロテインスキマー

プロテインスキマーもこのサイズ。
なんとこれ、市販品だそうで、海外のマニアの中には個人で使っている人も居るそうな…

熱交換器

画像はラグーン水槽のものではなく、もっと小さな水槽のものですが、この熱交換器をヒーターやクーラーの代わりに使って水温を調節しています。
仕組みとしては、内部に何枚もの金属のプレートがあり、飼育水が流れるプレートと、お湯(または冷たい水)が流れるプレートが交互に交わることで、水は混ざらず熱だけが金属を通して伝わり水温調節ができるそうです。
ではそのお湯はどう用意するのかというと、水族館のような大型の施設には空調のためのボイラーが設置されているので、その熱源を利用しているとの事です。
水族館ならではの仕組みですね!

予備槽


水族館には展示水槽以外にも裏側に予備槽と呼ばれる水槽があり、そこでは怪我や病気の治療中だったり、繁殖中だったり、搬入したてであったり、展示を控えたお魚たちがたくさんいます。
気になったものを簡単にご紹介します。

クチバシカジカ

ジャイアントクラブ

この辺は展示スペースの関係で現在待機中だそうです。

繁殖中のクラゲ

えるしっているか くらげは あるてみあしかたべない

これがクラゲの餌であるアルテミアの1日分だそうです。毎日これだけ沸かして、栄養も添加して与えています。

インタビュー【前編】でも少し触れましたが、やはりクラゲの飼育は特に大変みたいです。
毎日の餌の用意だけでなく、クラゲが生きていくためには水流も必要で、それも強すぎず弱すぎずの調整があり、ろ過の循環とは別に水流のための循環の2ライン作らないといけないそうです。
その他にも、ポリプなど目に見えないくらい細かいものがあり、それが混ざらないようにする必要もあります。
ポリプ

冷温庫で温度調節をしているそうです(何日に何度にしようという具合に温度変化も付ける必要があります)

よく見るとクラゲの赤ちゃんが

これだけ大変なクラゲの飼育ですが、なんとクラゲの寿命は半年程しかないんだそうです。
だから常に繁殖させているんですね。

ちなみにイカも寿命が1年ほどしかなく、クラゲ同様常に繁殖させています。

イカの卵




冷凍餌に餌付かない生き物のために活餌のストックも

クロレラも培養していました。


インタビュー後半戦


バックヤードの様子も一通りご紹介したところで、前回のインタビューの続きをお送りします。
水族館のひみつ道具(?)「ビニールタモ」は必見です!

サンシャイン水族館はビルの上にありますけど、大きな魚ってどうやって搬入しているんですか?


実は大きな魚ってマンボウくらいであまり居ないんですよ。
大きなエレベーターがあるんですけど、エレベーターに乗り切らなくなる前に他の園館さんにあげちゃったりしています。
なのでそのエレベーターがマックスサイズです。

─それは、小さいうちから育ててて大きくなったけど、ここで終身飼育するからそのまま飼い続けようとはならないんですか?

ないですね。やっぱり何かあった時に、うちでは治療しきれず、他の施設で治療しなければいけないという可能性もあります。
その時に移動できないからというのはあまりにもかわいそうなので。

─あ、なるほど。浅はかでした

ただ、間違えてほしくないのは、それなら一般の人も飼いきれなくなったらどこかの水族館に引き取ってもらえるのかと言ったらそうではなくて、私たちは事前に引取先まで決めてから飼っています。
例えばマンボウも、大きくなったら他の水族館に行くことを事前に決めています。
大きい個体がほしいという所もありますからね。
なので、けして飼いきれなくなったら水族館が引き取ってくれるというわけではなく、そういう契約の上で飼育しているという事です。

実際飼いきれなくなったから引き取ってくれないかという問い合わせが非常に多いのですが、お断りしています。

─アクアルバムを見ている良い子の皆は大丈夫だと思いますが、生き物は最後まで責任を持ってお世話しましょう

サンシャイン水族館の人気者ランキングを教えてください


第5位:サメ、アシカ、マンボウ(同率)




─マンボウがサメやアシカ並みに人気があったとは…

第2位:ペンギン


─ペンギンかわいいですよね!

第1位:カワウソ


特にカワウソの人気は絶大です。

─カワウソは私もペットにしたいと本気で考えるくらい好きです。しかしアクアルバム的にはもう少し熱帯魚がランクインしていたら嬉しかったですね

クマノミの人気も非常に高いですよ。

─やっぱりニモの影響力はすごいですね。

アシカなどにパフォーマンス用の芸を覚えさせるのにどれくらい練習しているのですか?


基本的に芸は褒めながら覚えさせるしかなく、教えるということはできないんです。
合ってる行動をした時に褒めていくだけなので、とにかく合ってる行動をしてくれるまで根気よく続けるしかありません。

─それでは間違えた場合に罰を与えるということは無いんですか?

そういう教え方はできません。
動物に物事を教えるということは、アクションを起こさせるということです。
アクションを起こさせて、それが合っていた場合は褒める。
その繰り返しなので、これはトレーナーのセンスと、動物がいかに気づくかというセンス、その両方が必要になります。
なので、本当に分かる子は1時間でそのアクションを覚える子もいるし、半年経ってもできない子もいます。

─それは同じ種類の動物の間でも個体差があるんですか?

そうです。個体差とトレーナーの教え方、そしてその相性も大切です。

なので結論としてはそれぞれの個体によってまったく違うということになります。

水族館のサメは同じ水槽の魚を食べたりしないんですか?


周りの弱っている魚を食べることもありますが、基本的には餌をバンバン与えているのでわざわざ捕まえる労力を使わなくてすむ餌を食べています。

水族館で重宝している市販品はありますか?


これは水族館ならではなんですが、市販のタモを、そのままのネットで魚をすくうと傷ついたりしてしまうので、ネットの部分を切り取って、代わりにビニール袋を付けます。
そのビニール袋の上の部分にだけ穴を開けて下の部分はそのままにしておきます。
そうすると下の部分には水が溜まって、それで魚をすくえば魚を傷つけることなく、水から出すこともせずに他の水槽に移すことができます。
特にデリケートなイカやクラゲなどはそれがないと捕まえられません。
私たちは皆ビニールタモと呼んでいます。
後、透明のビニール袋だと、魚も気づきにくいみたいで、あまり逃げることなく簡単に捕まえることもできます。
簡単に作れますので、是非皆さん使ってみてください。

最後にサンシャイン水族館のマニアックな見どころを教えてください


マニアックなところで言うと、結構隠れキャラが居るので、それを探してほしいですね。
流木の下とか、岩の間とかに説明板に載っていないような生物が居ることが結構多いんです。
担当しか知らないレベルの怪しいのがいたりします(笑)
そういうのを見つけてほしいです。
砂の中に潜ってたりして、本当に見れたらラッキーレベルのもいますので。
よーく見ると砂の中からエイの尻尾だけが見えてたりなど(笑)

後は、どんどんスタッフに質問してください。
魚の事はもちろん濾過槽など設備のことでもなんでも答えますので。

インタビューを終えて


水族館の水槽も家庭の水槽も、規模は違えど根本的なところはあまり変わらないのかもしれません。
しかし、水族館には見せる工夫、テクニックがたくさんありました。

冒頭、水族館の表と裏を紹介すると述べていますが、水族館の目的にも表と裏があるようです。
表では工夫をこらした展示で私達を楽しませてくれて、その裏では生き物、自然の保護活動をしています。
例えばサンシャイン水族館では沖縄のサンゴを殖やしてまた沖縄の海へ還す活動を実施しています。
http://www.sunshinecity.co.jp/campaign/cp/coral_project/

今回たくさんのお話を聞かせて頂く中で、生き物への愛情や環境保護への使命感、そして「いかに生き物の魅力を人々に伝えられるか」という想いが凄く伝わってきました。


サンシャイン水族館にまだ行ったことのない人は是非一度訪れて、気になることがあれば、気軽にスタッフの方に質問しちゃいましょう!
行ったことある人も、何度も足を運んで隠れキャラを探してみましょう!



おまけ


この照明の物量に衝撃を受けました。
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[8]返信 みやや さん みやや 2017年4月25日
水族館のここまで踏み込んだ記事はなかなか読めないですし、皆の素朴な疑問を持っていってもらったり色々知れました。

[7]返信 コリだらス さん コリだらス 2017年4月10日
やっぱりプロだなーって思うところが随所に^ ^
何もかもが壮大で管理も大変なんだろうな
ビニールたもは真似してみようー

[6]返信 riparian さん riparian 2017年4月9日
色々勉強になります、考え方一つとっても水族館は娯楽施設であり、研究・保護活動施設であるんですね、趣味でしかない自分とは対象的で頭が下がります。 
見ていて思ったのが照明は工事用使用の為青光が少ないのか?もしくはお客が見やすいように配慮かも・・・海水淡水魚もやっぱり好きですがカワウソもかわいいですよね。

[5]返信 しゅう さん しゅう 2017年4月8日
いや~勉強になりました!
水族館は研究施設がメインで、展示はオマケだとむかーし聞いたことがあったけど(水族館につとめたくて)、やはりそうでしたね。
設備の規模が想像してたのより遥かに大きくて、さすがだと思いました。
良い物見させていただき管理人さんには感謝!

[4]返信 テケトウ さん テケトウ 2017年4月7日
さすがプロですね、色々と勉強になります
デカイろ過槽などはロマンがありますねぇ

[3]返信 iori さん iori 2017年4月7日
しかし小さな水槽内では
どんなに餌をあげても大型と小型の混泳は難しいんですよね…なにが違うのか。
水槽内の光や水面の揺らぎの表現はこだわりのあるトコロですので
アルミホイル等もう少しいろいろ試してみたいと思いました。

[2]返信 六花 さん 六花 2017年4月7日
ビニールタモなるほどですね〜!
カチョンをわざわざ買わなくても、ビニールで簡単に作れて、しかも透明で魚を怖がらせない…(*´Д`*)
サメが他の魚を襲わないのは、エサをたくさんもらってお腹いっぱいだからなんですね〜
ジョーズのせいでサメは他の生き物を見境なく襲いまくるやつやと思ってしまいましたが、見方が変わりました!
お疲れ様でした〜(*´ω`*)

[1]返信 てのひら さん てのひら 2017年4月7日
長いwお疲れ様ですw
光の揺らぎの作り方やビニールタモとかは参考にしてみます〜、最近魚移動させるのに1時間かかったもんで😅

カワウソさんはかわいいですよねー、写真のコ漫才してるみたい😆

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